6カ国8人の生活 その4
イギリスで6カ国8人の生活をしていました。

私は3階の部屋に住んでいた。屋根裏部屋のような感じで、天井の一部が斜めになっていて、何回か頭をぶつけて痛い目を見た。部屋の一面に大きな窓があり、天気のいい日は日当たりも良く、小さい部屋であったが居心地は良かった。

すぐ下には裏庭が見え、裏庭の向こうは別の家の裏庭と別の家の部屋が見えた。長屋同士が背を向けて立ち並び、その間に裏庭があるといえば分かりやすいだろうか。私の部屋の窓から、向かいの家がちょっと遠くではあるけれども見え、中に住んでいる人の生活が垣間見えた。覗きの趣味はないけれども、人が生活している様子を少し覗くのは楽しいものだった。洗濯物を干すおばさんや、机に向かって勉強らしきことをしている少年を見てはあっという間に時間が過ぎていった。

長屋はせいぜい三階建てで、どの家も同じ高さなので、空を隠すような大きな建物はなく、部屋の窓からは空が良く見えた。天気のいい日は青空を眺めながら、雲が流れて行くのをじっと見ていたり、天気が悪い日は空いっぱいの厚い雲の、色の違いを飽きもせず眺めていた。

手入れをされていない部屋、家具であったため、床から釘のようなものが出ていて、一度足から少しだけであるが血を流したことがあったし、大雨の日にはひどい雨漏りもした。クローゼットなんていうたいそうなものはなく、壁にパイプが伸びていてそこに服を吊るしていた。小さな戸棚があったが、観音扉の形をした扉がしっかり閉まらず、ほっておくと扉が開きっぱなしであった。真っ白な壁は殺風景で、味気ないものであった。

やはり窓の影響は大きかったと思う。それだけ質素で殺風景な部屋であったし、住んでいた9月から5月のうち10月から3月ぐらいまでは朝8時過ぎまで真っ暗、午後3時過ぎるとまた真っ暗なので部屋の中では電気をいつもつけていたはずである。更に、その間はほぼ毎日曇天であったにもかかわらず、私の中の記憶では私の部屋は日の光がさんさんと入る、明るい部屋である。

そのあと住んだフランスのアパートは逆に日の光がほとんど入らない部屋で、かなり気が滅入った。今住んでいるところは窓がたくさんある家だ。初めてここを見たときに一目で気に入った。私の窓好きの原点はイギリスの、あの長屋かもしれない。

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poc

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